コミュニテイーハウス法隆寺 開設にあたって     はじめに
                 「壁」のない家   

 
 「コミュニテイーハウス法隆寺」は気が合う仲間が一緒に暮らそうと2004年11月、奈良・斑鳩の里に生れました。
気が合う仲間とは、友人や知人とか親しい関係にあるということではありません。心に「壁」を持たないで”ありのままに生かしあい”支え合って暮らしたいという共通の思いを持った人の集まりです。出会った13人は互いに無縁でしたが解けあうのに時間はかかりませんでした。

  住まいづくりの計画は、ゼロの段階からいっしょに参加してどんな些細なことにも意見を出し合い、汗を流しあってゴールに達しました。株式会社という運営組織にしたのも負担の公平、権利の平等、そして利益を共有するために編み出した方式です。夫婦であっても独立した株主の一人としてエレベーターの扉の色合いまで議論した間柄ですから互いを知り合っています。入居者として、株主としていつでも話し合えるため、約束事はあっても規則は不要となりました。もちろんプライバシーには踏み込みません。個人の尊厳を大事にしあうことは、この小さなコミュニティーを守ることに通じます。すでにそれと気づかないほど上手な気遣いの関係が醸されています。

 高齢社会は重い、暗いものではなくて成熟した人たちが層をなす社会だと私たちはとらえています。血縁によらない「新しい家族」による共生の営みを、このささやかな家を舞台に育みあい、紡いでいきたいと私たちは出発しました。経験や知恵を出し合い、心を寄せ合う仲間同士の「日常」を積み上げる中で、仮に痴呆症になっても、終末の病気を抱えることになっても、受け止めあってここで最期を迎え、旅立ちたいと思っています。終の住処のこの家で、どんな暮らしが創造されるか、未知の世界はこれから幕を開けるのですが、それを一番楽しみにしているのは、実は私たち自身なのです。

 株式会社「安寿ネット」は安心とやすらぎ、歓びを共にし、明日に繋げたいと、命名しました。そんな願いに深い共感を寄せて下さり、可能な限りのバリアフリーと個人の居場所が共存する建物が実現するまでに、様々な応援をいただいた増田史男・住まいとまちなみ研究所長、パナホーム奈良支社、JAならけんと、地主の巳浪彰司さんなど、たくさんの方々にお礼を申し上げます。

                                平成16年11月吉日
                                     株式会社安寿ネット
                               コミュニテイーハウス法隆寺
一同

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